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2005.04.22

遙かなる“ロックンロール”

@nifty:NEWS@nifty:曲技訓練中に墜落・兵庫(共同通信).

 21日午前11時20分ごろ、兵庫県豊岡市岩井のコウノトリ但馬空港でアクロバット飛行の訓練中の1人乗り軽飛行機が滑走路脇の草地に墜落、前部が大破した。パイロットで茨城県小川町、有限会社「エアロック」所属の岩崎貴弘さん(53)が全身を強く打ち同市内の病院に運ばれたが、約1時間半後に死亡した。飛行機は曲技飛行用の米国製複葉機「ピッツ式S―2C型」。別の1機と空港上空を飛んでいた。

[共同通信社:2005年04月21日 13時45分]


airock
 今日も昼メシを食いながら、いつものようにお昼の犬あっち行けニュースを見てました。ただいま入りましたニュースです、とアナウンサーが前置きして「但馬空港で小型機が墜落しました」と原稿を読み始めました。“但馬かぁ・・・ロックだったらやだよなぁ”と思いつつ画面を見ていると、見慣れた赤いラダーの白い飛行機がひしゃげてました。ワタシは「ロックぢゃねぇか・・・」と呟いたきり、しばらく箸を動かすことができませんでした。

 2002年からは開催されなくなってしまったNAF厚木オープンハウスですが、1992年から2000年までは「WINGS」というタイトルで、アメリカのエアショーをそのまま日本に持ち込んだような雰囲気でハデハデに開催されていました(2001年は“WINGS&祭”というタイトルでフライトなし)。そして1993年4月24日と25日の両日に行われた“WINGS'93”で、ワタシはショーン・タッカーのフライトを初めて目の当たりにしたのでした。飛行機の飛ぶ原理を無視したとしか思えないような、破天荒な飛びっぷりに文字通りぶっ飛んだモンです。それまで見たことのあった民間小型機のデモフライトとはまるで別モノで、まさにアメリカンアクロの真髄を見せつけられたのでした。

 それから3年後の1996年、空自を退官した一人の日本人パイロットがそのショーン・タッカーに師事してアメリカのエアショーライセンス取得を目指しているという話を聞きました。その人がロック岩崎さんでした(以後“ロック”と呼びます)。ロックはその年の3月にライセンスを取得、8月には日本で「エアロック・エアロバティックチーム」を発足させました。そして11月、和歌山県南紀白浜空港旧滑走路で開催された日本航空協会主催「スカイレジャージャパン'96」で正式に日本デビューを飾ったのです。

 いったいどんな飛びっぷりなんだろうと思いつつ、97年はロックの参加した航空祭に行くことがなく、98年10月25日の空自百里基地航空祭でようやく見ることができました。軽快な音楽とDJに乗って空を縦横無尽に駆け回るそのフライトは、今まで見てきた日本人アクロパイロットのそれとは明らかに違うものでした。また機上から観客に語りかけるというスタイルも新鮮で、観客を惹きつけ飽きさせない工夫が随所に見て取れました。日本では航空祭といえばほぼ自衛隊基地のそれと決まっていて、内容は戦闘機などの飛行と救難展示、そしてブルーインパルスで〆、という言ってみれば『自衛官が飛ぶのを見せてもらう』的ワンパターンなものばかりだったのですが、ロックの登場でようやくそこに民間人によるエアショー的要素が加わったのです。WINGSで本場アメリカのエアショーの一端を知ることができた幸運な人たちは、ようやくそのワクワク感をほんの少しでも取り戻せたのかもしれません。

 その後は年に1,2度ロックのフライトを見ることができました。機体とパイロットを増やして2機態勢になった2002年シーズンは、7月28日の空自松島基地航空祭で見ましたが、演技の間の妙な間(ま)がなくなってスピーディになり、2機による交差課目も追加されてかなり面白くなったものです。もっとも翌年にはまたロックひとりだけになってしまったのですが、昨シーズン後半からは再び2機態勢で素晴らしい演技を各地で見せてくれていました。

 せっかくサンダーバーズが来日したのに、雨に祟られたばかりでなく駐車場を巡る混乱が語りぐさになってしまった昨年9月26日の空自百里基地航空祭。雨でフライトキャンセルとなったサンダーバーズとブルーインパルスを後目に、1430頃のほんの少しの雨の止み間を突いて唯一アクロを行ったのがロックでした。せっかく来てくれたお客さんを手ぶらで帰すわけにはいかない、というロックの意地だったのでせうか。もう帰ろうと思っていたので駐車場からロックの演技を見ていたワタシは、低い雨雲の底を掠めるように飛ぶロックの、飛ぶことに対する情熱をひしひしと感じたものでした。

 今年もエアショーシーズンが始まりました。今年はどこで見られるか、楽しみにしていた矢先の今日のニュースです。もうピッツスペシャルを駆って青空を駆け回るロックの姿は見られません。ロックのショーの始まりは高空から背面姿勢のままスピンしながら降下してくる「ロックンロール」という荒技。しかしロックの魂は今日、そのまま二度と帰ることのない空の遙か高みへと昇っていってしまいました。

 ロックはワタシ達に素晴らしいショーを見せてくれました。これからも、飛行機を愛する者たちがロックを忘れることはないでせう。どうぞ安らかに。さようなら。

(写真は2002年松島基地航空祭に於いて、演技終了後に2番機パイロットのノブとハイタッチを交わすロック岩崎。背後に写っている機体はロックと共に天に昇ったピッツS-2C(JA22AR))

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コメント

会社から帰る前にヤフーのニュースを確認する癖があるのですが、そこで知りました。
まさかロック岩崎じゃないよな…と思いながらニュースを見てみたら、残念なことにパイロットがロック岩崎でした。
一度でいいからナマのフライトを見たかったです。
ご冥福をお祈りします。

投稿: るーぷあんてな | 2005.04.22 01:47 午前

>>KWATさん

私も昼のニュースで事故を知りました。「セスナか何かか?」と思っていたところ、ピッツの尾翼と「空へ!」のロゴ、内心真っ青になりながら休憩時間に築城の友人宅に電話をし、ロックが墜ちたことを知りました。

地面のどこにもこすったような後が無かったのとノーズが殆ど原形をとどめていなかったことから、真っ逆さまに墜落したみたいですね。

私の長男も、去年の築城では戦闘機の機動飛行や、B.Iにはちょっと食傷気味みたいな感じでしたが、ロックとサニーの展示飛行には歓声を上げて見入っていました。

ロックがショーンから受け継ぎ築き上げてきたもの、サニーがロックから受け継ぎ得たもの・・・これらが無に帰すのはとても悲しいです。是非今度はサニーが子供達のヒーローになってくれんことを祈っています。

今はロックの最後のテイク・オフを静かに見送りたいと思います。「帽振れ!」


最後に「いち飛行機馬鹿」として岩崎"ROCK"貴弘氏のご冥福を心からお祈りいたします。合掌

投稿: F-4EJ改 | 2005.04.22 01:54 午前

>>KWATさん

ほんとうに悲しいできごとです。
私も、最初にロックさんの演技を見たのは、WINGS2000でした。
かのユルギス カイリスに負けじと素晴らしいフライトを見せてもらいました。その後、松島、小松、静浜と大ファンになってしまいました。特に小松では、前日の航空プラザで気安くサイン、握手をしていただき、一緒に写真も撮ってもらいました。あの笑顔と暖かい手は忘れられません。
昨年の百里では、おっしゃる通り悪天候の中、根性を見せてもらった気がしました。T.B.のバックを飛ぶロックさんを貼り付けた今年の年賀状をしみじみと見ています。
心からご冥福を・・・

投稿: CV-63 | 2005.04.22 11:56 午後

 今年は百里がありませんし、入間では飛ばないでせうから久しぶりに松島まで遠征してロックを見てこようかな、なんて思ってた矢先のことですからねぇ。(T^T)

 ロックさん、本当にどうもありがとうございました。

 大黒柱を失ったエアロックが復活するのは時間がかかると思いますが、必ずや復活してくれると信じています。秋にはオートボルテージュ復活の噂も聞こえています。毎年のように来日してくれるユルギス・カイリスや、レッドバロン、ディープ・ブルースなど日本勢がロックの分まで日本の空を賑やかにしてくれることを期待しています。

投稿: KWAT@ジャギュア中 | 2005.04.23 01:14 午前

今日航空ファン買ってきました。

めっさ辛いです・・・「エアロック通信」がいつものように載ってるから・・・。

今、ロックのアクロを思い出しながら呑んでます・・・。

投稿: F-4EJ改 | 2005.04.24 02:46 午前

 ワタシも一昨日はKFインデックスを暗~く作ってました。でもまだJウイングよりいいですよ。今月のJW誌は辛くて見れませんです・・・。。・゚・(ノД`)・゚・。

投稿: KWAT@ジャギュア中 | 2005.04.24 04:26 午前

>>KWATさん

>今月のJW誌は辛くて見れませんです・・・。。・゚・(ノД`)・゚・。


・・・て特集組んでるじゃないですかぁ、うっわー・・・しかも「新しい課目を練習中だから楽しみにしててね!」て感じの・・・。

こら辛いなんてもんじゃないっしょ・・・。(泣)

投稿: F-4EJ改 | 2005.04.25 11:58 午後

お久しぶりでし。ちゃんぐーでし。

今回の事故。まいってるです、はい。
ウチの小僧と娘もロック大好きだったからねぇ。

ある静浜公開日の思い出・・・

いつもの大井川河口の土手で弁当食いながら見物。
と、そこにピッツが舞い上がった。激しい機動。
夢中になってみてる小僧と娘。
そのうちに娘が泣き出した。「おい、どした?」
「とーちゃん、あのヒコーキ壊れてるヨ」
「泣くなー、それに壊れてないぞ」
「だって横向きに飛んでるもん」
「んにゃ、運転してる、おいちゃんが凄いんだよ」
ここでピッツが急降下開始。
「だーめー、落ちるー、壊れるー」
「大丈夫、平気だから見てるよい」
「だって、だってケム噴いてるぅ、壊れたー」
この一言で周辺の見物人は大爆笑したとさ。

ウチの小僧と娘がヒコーキ大好きになったのは
ロックのおかげ。ありがとうロック。
思う存分飛び回ってくださいな。ペコ。

投稿: ちゃんぐー | 2005.04.27 12:23 午前

 今年ももうすぐ静浜航空祭ですね。いつも静岡ホビーショーと同じ日だったり翌週だったりで行けないんですが、あれくらいの規模の航空祭だとロックの息遣いまで感じ取れるような近い距離で演技を見られるんでせうね。そうやって日本じゅうに飛行機ファンを増やしていったロックの功績は計り知れないものがあると思います。

 そうそう、ひとつ嬉しいニュース。ツインリンクもてぎでのオートボルテージュが今年は復活するようです。もてぎのサイトには出てませんがオートボルテージュの公式サイトのカレンダーに載ってました。
http://www.haute-voltige.com/inter/events/calendar.htm
 11月4日~6日だそうです。今年は行こうかな・・・。

投稿: KWAT@ジャギュア中 | 2005.04.28 01:49 午前

>>KWATさん

 ども、タイラー@出戻りです。
ロックさんの事故、ショックでした。
亡くなる5日前の16日に、関西ローカルの「ナンボdeなんぼ」という番組で、ロックさんのことが取り上げられていたので、最近ようやく余裕も出て来たし、一度は見に行きたいな、なんて思っていた矢先の事でした。

 ご存知のとおり私は元航空自衛官で、もしかすると自衛官時代のロックさんをどこかで見たことはあったのかも知れませんが、ロックさんがエアロックを始めてからのアクロは見たことがないんです。

 用務飛行以外で飛ぶ機会が無くなるよりは「生涯一パイロット」を選んで退官された人だということは知っていましたし、私が所属していた三沢でも、航空祭に来てもらって飛んでもらう話はあったのですが、ちょうど退官した年の事でしたので、見る機会は無かったんです。

 もうすぐ、縁の深い静浜の航空祭があるそうですが、その時に「ミッシングマン」なんかやってくれたら、と思ったり。
あるいはもっと縁の深い百里とか。
そこまでやれば、航空自衛隊もたいしたもんだと思います。

それはさておき。

 永遠のフライトに出発したロックさんに、敬礼∠(・_・)

投稿: タイラー@出戻り | 2005.05.06 04:00 午後

 表では(笑)ご無沙汰です。ATLAS-WEBの百里BBSによれば、ロックさんの葬儀があった4月27日は百里がやたらと賑やかだったみたいです。上がった各飛行隊が4機編隊を組んで北東方面(=水戸方面)に向かったとか(水戸上空でF-15の4機編隊の目撃情報も)、出棺の時間に合わせて204sqがミッシングマンフォーメーションをやったとか(未確認)。今の204sq立ち上げに多大な功績を残した方ですから、それくらいやってもいいですよね。

投稿: KWAT@ジャギュア中 | 2005.05.07 10:50 午後

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