読書録:「増補版 時刻表昭和史」宮脇 俊三
増補版 時刻表昭和史
宮脇 俊三
角川文庫
\533
2001年6月25日初版発行
2006年7月14日読了
渋谷駅前に立つ「忠犬ハチ公」の銅像。このハチ公が帰らぬご主人を待っていた昭和8年の渋谷駅前の描写から始まる本書は、鉄道と『時刻表』をキーワードに太平洋戦争直後までの著者の半生を綴った自叙伝であり、戦前から終戦直後にかけての、ひとりの若者の目を通した“昭和の情景”である。著者の父親は軍人出身ながら反戦代議士として名を馳せた宮脇長吉氏(昭和13年3月3日、衆議院で審議中の国家総動員法案をめぐり、説明員である陸軍の佐藤賢了中佐から「黙れ」と怒鳴られたのが宮脇議員である)であったので、フツーの庶民よりかなり恵まれた生活水準であったわけであるが、そうであっても戦時体制は否応なしに迫ってくるのである。そうしてどんどん戦争一色になっていく生活や、戦争に対する庶民の思いなど、教科書などで教えられた通り一遍の知識ではまったく知ることの出来ない生の人間の記憶がそこにある。そしてなにより、戦争が始まっても、空襲を受けても、戦争の終わりを告げる玉音放送が流れた直後であっても、汽車は走っていたのである。それにしても、もしかしたら玉音放送の最中も走っていたのかも知れない、そう思わせるような当時の国鉄の律儀さはどーよ。(^◇^;)
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