読書録:「遙かなる俊翼」渡辺 洋二
遙かなる俊翼 日本軍用機空戦記録
渡辺 洋二
文春文庫
\514
2002年7月10日第1刷
2006年8月31日読了
『終戦記念日あたりに戦争の本を読む』企画第2弾。先に読んだ第1弾の「零戦撃墜王」が、零戦に乗って実際に戦ったいわゆる“中の人”が書いた戦争であったのに対し、こちらは戦後生まれの作家である“外の人”が書いた戦争の記録である。先の戦争で、日本陸海軍が用いて戦った数多の軍用機の活躍と、それに乗っていた人々のそれぞれの戦いを、著者は当事者の方々の証言と諸々の記録をもとに丹念に再現していくのである。興味深いのは、「零戦撃墜王」の岩本氏も登場する「ラバウル上空の完全勝利」という一編。同じ戦いを、戦った当事者の視点と後世の研究者(と表現しても構わないだらう)の視点とで見ることができるのである。岩本氏の回想では文字通り敵機をバッタバッタと落としたかのように書かれていた、昭和19年1月17日にラバウル上空で行われたこの“完全勝利”の空中戦であったが、数字を精査していくと当事者が感じたほどには日本側の撃墜数は多くなく、日本側が集計したこの日の撃墜数の合計が90機(このうち岩本氏のスコアは5機)であったのに対し、米側の記録では未帰還の米軍機は12機であったという。ただし日本側の未帰還機がゼロであったことから“完全勝利”であったというわけなのである。このことは、当事者の証言を鵜呑みにすることの危うさを教えてくれるのであった。
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コメント
夏の風物詩?となった文春文庫の渡辺洋二さん作品、今年は飛燕でしたね。わりと好きな機体(雷電も好きさ(^^))なんで楽しめました。あと、福生の航空審査部の本が好きでしたね。
私は↑はアサヒソノラマ版で読んだんですが、1.17のワンサイドゲームは久々爽快でした。
ところで、早く零戦戦記の2巻目が出ないすかね。
投稿: ゆずこせう | 2006.09.03 01:10 午前
本の中でも書かれてましたが、そのワンサイドゲームが昭和19年だってのが驚きですよ。ロウソクの炎が消える前の一瞬の輝き、ってやつですかね。
零戦戦記は読んでません(爆)。文庫になるかしらん。
投稿: KWAT | 2006.09.03 11:21 午後