読書録:「アンノウン」古処 誠二
アンノウン
古処 誠二
文春文庫
\543
2006年11月10日第1刷
2006年12月19日読了
元航空自衛官であった著者のデビュー作。とある片田舎の某レーダー基地(とはいえ「遠州灘に面した」「掛川駅で」などと書いたら、第22警戒隊のいるあすこしかないだらう)を舞台にした“人の死なない”ミステリーである。しかしユーモア溢れる文体は随所で笑いを誘い、ミステリーを読んでいることを忘れてしまうほど。また同時に、主人公である野上三等空曹の成長物語でもあり、自衛隊基地とそれが所在する地元地域との関係をも考えさせられる作品でもある。
隊長室の電話機から見つかった盗聴器の謎を調べるため、府中の防衛部調査班から派遣された浅香二等空尉の補佐という役目を仰せつかった野上三曹。基地司令室での会話の行きがかり上、読む気もないのに分厚く重い戦史書を借りる羽目になり、「押し花でも作ろう」などと思いつつ戻った6人部屋の自室にたまたまいた後輩に、ダンベルにすぎないその本を押しつけてしまう野上三曹だが、物語の最後では「読み終わったら早く返せ」とすっかり読む気になっていたりするのである。ここにまたひとり、立派な自衛官が誕生したというわけだ。不肖・宮嶋茂樹カメラマンの解説も面白くて読み応えあり。
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