読書録:「空白の五秒間 羽田沖日航機墜落事故」三輪 和雄
空白の五秒間 羽田沖日航機墜落事故
三輪 和雄
新風舎文庫
\690
2004年3月5日初版第一刷発行
2007年2月24日読了
1982年2月9日に発生した羽田沖日航機墜落事故(「日本航空350便墜落事故」、ちなみにその前夜にはホテルニュージャパン火災事件が起きている)は、事故調査の結果機長の不可解な操縦操作により墜落したことが判明した(その過程で明らかになった「逆噴射」や「機長やめてください」という言葉は、その年の流行語にもなってしまった)。本書は脳神経外科医である著者が、統合失調症(当時は精神分裂病と呼ばれていた)に罹っていたという機長の、その心の病の発病から墜落事故に至るまでの経緯を追ったノンフィクションである。本書の圧巻は247ページからの、墜落直前のコクピット内の再現シーンであらう。
精神病は医者に行って検査をすれば診断できる、という病ではないため、その見極めが難しいのは周知の通り。それゆえ本人はもちろん周囲の人も当人の行動を注意深く見守り、できれば行動の一切を医者に伝えることが大切である。しかし鬱病や神経症と違い、統合失調症は本人が病気である自覚がないため、なかなかそういう体勢が取れない。著者は専門家であるがゆえ、事故に至る経緯を追う中で『あの時あのようにしていれば』という思いが文中の至る所から感じ取れる。事故のあと、当事者の日本航空を初めとする航空会社各社は、パイロットの健康管理体制を強化したが、精神異常を捉えることはやはりまだ難しく、また人権意識が強くなった現在では精神異常が発覚したからといってその者をすんなり辞めさせるわけにもいかない。果たして乗客の安全はどうやったら守られるのか、未だ効果的な方策はないのであらうか。
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