読書録:「遠ざかる祖国」逢坂 剛
遠ざかる祖国(上)(下)
逢坂 剛
講談社文庫
\667(上)、\695(下)
2005年7月15日第1刷(上・下とも)
2007年6月5日読了
スペインを舞台に活動する日本人スパイ・北都昭平を主人公にした三部作の2作目である。時は太平洋戦争開戦直前、第二次大戦を闘うヨーロッパの複雑な情勢に翻弄されながら、次第に日本が戦争へと近づいていくのをなんとか食い止めようと奔走する北都。しかし、あまりにも祖国日本はスペインから遠すぎるのだった。そして前作「イベリアの雷鳴」のラストで“妻”を亡くした北都と、やがて敵国となるイギリスの秘密情報部員ヴァージニアとの恋の行方は。決して展開が早いわけではないのだが、著者の語りの上手さにぐいぐい引き込まれて一気に読んでしまった。
ところで、1941年8月14日に「大西洋憲章」という英米共同宣言が発表されている。これはこの作品が描いている時期に発表されたものなので、登場人物たちもこれに言及している。これに対する北都の意見や、白人優位主義者のスコットランド・ヤードの警部補を北都と議論させているあたり、著者の太平洋戦争に対する見方はワタシと共通しているように思われる。こういう作品は安心して読めるのである(笑)。
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