読書録:「全線開通版 線路のない時刻表」宮脇 俊三
全線開通版 線路のない時刻表
宮脇 俊三
講談社文庫
\400
1998年2月15日第1刷発行
2008年2月9日読了
JR各社が国鉄だった頃、赤字ローカル線の廃止が取りざたされる中で、あともう少しで開通する建設中の路線も工事が凍結されてしまった。新線の開通を人一倍楽しみにしている著者は、開通どころか廃止されるかもしれないそんな建設中の5つの路線を見に行き、一足早く乗った気分に浸るのである。開通を想定した時刻表まで作って。・・・ここまでが、1980年から1982年にかけての5路線の取材をまとめて、さらに瀬戸大橋線と青函トンネルの工事現場に行った時の話を加えて1986年4月に刊行された本書の前身「線路のない時刻表」のあらましである。
1983年4月に開業した日本初の第三セクターによる鉄道「三陸鉄道」(本書で取り上げた5路線のひとつでもある)が好成績を上げたのをきっかけに、全国各地で廃止対象になっていた国鉄赤字ローカル線が地元出資の第三セクター路線に生まれ変わった。本書で取り上げた建設中だった各線も、第三セクターによる経営が決まって工事が再開され、無事開通の運びとなった。もちろん著者は開通した各線に乗りに行き、文庫版向けに書き下ろした乗車記を追加したのが本書、「完全開通版」である。
著者が本書で取り上げた5つの路線を見に行った時は、あと一歩という時点で工事がストップし、開通の見込みがまったく立たない中であった。であるから、案内をする鉄道建設公団(当時)の担当者や地元自治体の首長などの憤懣やるかたない思い、あるいは諦めのような気持ちが読んでいてひしひしと伝わってくる。書いている著者も同じ思いなので余計にそう感じる。なので、その後第三セクター路線として開通した各路線(三陸鉄道、北越急行、樽見鉄道、智頭急行、土佐くろしお鉄道中村・宿毛線)が、こんにちまで存続しているのは微妙に鉄分が混じったワタシとしても喜ばしい限りである。この中ではワタシは三陸鉄道だけは通して乗ったことがあるが、他の路線も機会があったらぜひ乗りに行きたいものである。*^_^*
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 読書録:「『雪風ハ沈マズ』」豊田 穣(2013.10.28)
- 読書録:「とんかつ奇々怪々」東海林 さだお(2013.09.01)
- 読書録:「レッド・ドラゴン侵攻!(全4部)」ラリー・ボンド(2013.09.01)
- 読書録:「ネコの亡命」椎名 誠(2013.05.07)
- 読書録:「ハーンの秘宝を奪取せよ」クライブ・カッスラー&ダーク・カッスラー(2013.05.01)
コメント