読書録:「レインボー・シックス」トム・クランシー
レインボー・シックス(1)~(4)
トム・クランシー/訳・村上 博基
新潮文庫
\667(1,3巻)、\629(2,4巻)
1999年12月1日発行(1,2巻),2000年1月1日発行(3,4巻)
2008年5月14日読了
『容赦なく』(新潮文庫)でトム・クランシー作品の主役に躍り出た、ジョン・クラーク物の第2弾である(『容赦なく』では主人公の名前はジョン・ケリーと表記されていたが、本書ではほとんどコードネームの「クラーク」が使われている)。相次ぐ国際テロに対応するため、米英両国を中心とする各国のテロ対策スペシャリストを選りすぐって設立された多国籍特殊部隊「レインボー」。クラークはその長として辣腕を振るうこととなる。よってクラーク自身はデスクワーク中心になるため、現場で暴れるのはクラークの良き相棒にして女婿のドミンゴ・シャベスである。
本書のクライマックスで“レインボー”は、敵役である過激な自然保護主義者たちが引き起こす人類(ほぼ)絶滅計画を寸前で阻止し、彼らが逃亡した先で対決するのであるが、それまで物語内で対決してきたテロ組織との戦闘に比べこのシーンはなんとも迫力に欠ける。相手が戦闘のプロではないので当然といえば当然なのだが、それならここはもうちょっと手加減してやっても良かったような気がする(もっとも作者は登場人物にも「おぞましい一日だった」と言わせているが)。とはいえこの敵役がやろうとしたことは、かつて我が国でオウム真理教が引き起こした地下鉄サリン事件を大規模にしたようなものなのだから、それ相応の報いを受けて当然だらう、と作者は考えたのかもしれない。
ちなみに、その計画を実行しようとしていた舞台はシドニー・オリンピックの閉会式会場である。今年は北京オリンピックがあるわけであるが、暑い北京の夏でも同じコトは起こせそうな気がするのがなんとも、である。もっとも、キーとなるアレはたぶんどの国のどの企業であっても開発はできないだろうと思えるのが救いであり、その部分こそが本書の中で数少ない“明らかなフィクション”なのである。
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