読書録:「強行着陸」ウイリアム・ハリントン
強行着陸
ウイリアム・ハリントン
訳・吉川 正子
講談社文庫
\680
1992年6月15日第1刷発行
2008年6月16日読了
航空機モノのサスペンス小説かと思ったらコンピューター犯罪モノであった(笑)。この小説のオリジナルが上梓されたのは1991年。パソコンのCPUはi80386が最新最強、まだインターネットは一般的でなく、コンピュータネットワークはモデムを介して電話回線でテキストデータのみをやり取りし、コンピュータの画面の解像度は640×480(日本では640×400だったり(笑))、黒地に白や緑やオレンジのテキスト表示が精一杯。画像表示って何それおいしいの? という時代である。逆に言えば、そんな時代にコンピュータウィルスを使った犯罪を取り上げた小説が書かれていたというのがむしろ驚きかも。
いくらそんな時代だとはいえ、アメリカの民間航空の管制システムに潜り込んで、管制画面上からジャンボジェットを1機消し去る、などというのがそんなに簡単だとは思えないが、そこはそれ、何しろ悪者側の主人公は天才プログラマーである。良い者側の主人公(てか、たぶんこっちが物語の主人公なんだらう)もまたコンピューターネットワークの防御のエキスパートというわけで、物語はこの二人のネットを介した対決を縦軸に、コロンビアからのコカインを満載したジャンボジェットが嵐の中無事に目的地に着陸できるか否か、を横軸に進んでいく。しかしその両方が同時進行であるため、かえってクライマックスの盛り上がりを阻害した感も否めない。もうちょっと盛り上げられたような気もするのだが。
なんとゆーか、この小説が世に出た1991年からコンピュータネットワークの世界に住んでいるワタシ的には、この物語の世界が妙に懐かしい感じがしてならなかったのであった。(^◇^;)
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