読書録:「地下生活者/遠灘鮫腹海岸」椎名 誠
地下生活者/遠灘鮫腹海岸
椎名 誠
集英社文庫
\427
1996年12月20日第1刷
2008年6月28日読了
SF小説というより“不条理小説”とでも表現した方が相応しい中編2題。「地下生活者」の主人公は突然の“事故”で地下鉄の連絡通路の真っ暗闇に閉じこめられ、「遠灘鮫腹海岸」の主人公は何の気なしに乗り入れた砂浜に車輪を取られた大事なワゴン車が砂に埋もれていくのを為す術もなく見守ることしかできない。作品中でその理由が明かされることはなく、また結末がどうなるかが示されるわけでもない。特に「遠灘~」のほうは結末がまったく唐突にストンと切られたように終わるので、読み手は主人公と同じように「まったくこれはなんてこったの話だろう・・・」と途方に暮れるのである。しかしそこは椎名作品、独特の言語感覚がなせる「飄々感」というか「ふわふわ感」というか、そんな感じが全編に渡って漂っているためちっとも深刻な話にはならず、いつの間にか「遠灘~」の主人公と一緒になって底巻風(「遠灘~」で『うがじ』と読ませている浜風)に吹かれたり、「地下~」の主人公と一緒に想念となってコンクリの隙間から地上に抜け出て鳥に追いかけられたりするのであった。
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コメント
どもこんちわス。赤マント読んでますた。(笑
小説はかつて「中国の鳥人」だったか?を読みました
>飄々感というかふわふわ感
かつて昭和軽薄体なんて呼ばれましたねえ。
投稿: まっぴら | 2008.06.29 11:42 午前
「中国の鳥人」は次に読む順番になってます。文庫で刊行された順によむことになってますので(笑)。それにつけても椎名誠の文庫本刊行ペースは早すぎ。
赤マントでググったらこんなのが。
椎名誠の新宿赤マントシリーズの全作品名と順番を教えてください - 教えて!goo
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3050932.html
これによると、ワタシは「ひるめしのもんだい」「おろかな日々」「モンパの木の下で」の3冊しかまだ読んでないようです。文庫化されている「ただのナマズと思うなよ」までは持っているのですが。
昭和軽薄体ってのは、自身は意識したことはなく周囲が勝手にそう名付けたんだ、と自著で語ってますな。
投稿: KWAT | 2008.06.29 03:16 午後