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2008.09.16

読書録:「旅へ・南へ」野田 知佑

旅へ 新・放浪記1
野田 知佑
文春文庫
1999年5月10日第1刷

2008年9月6日読了
 
 
 
 
 
 
南へ 新・放浪記2
野田 知佑
文春文庫
2000年7月10日第1刷

2008年9月13日読了

 サブタイトルが同じ「新・放浪記」なので続き物だと思ったら、読んでみたらそれぞれ独立したエッセイであった。なんだかなー。まぁそんなわけで読書録もまとめて書くことにする。

 「旅へ」のほうは著者の青春記。大学を出てから放浪し、結婚してサラリーマン生活をし、そして離婚してまた放浪を始める頃までの話である。著者はつくづく「根付くことが性に合わない」のだなと思う。『普通の人生を送れ』と諭す親や親類縁者を嫌い、「オノレとはいったい何者なのだろう」と自問自答しつつ送る気ままな放浪生活に居心地の良さを感じるのだ。その自問自答は若い頃に誰もが通る道でもある。ワタシも今にして思えば、それを求めて学生時代に日本中を自転車で旅して回ったのだらう、とか考えてみたりもする。でも「答えは出たのか?」と問われれば、「んーなんとなく判ったような気もするけどまぁもういいよなそんなのみんな就職とかしてるしオレも人並みに生きていったほうがこの先得しないまでも損もしない人生歩めそうだしなうんうん」などとワタシは妥協してしまったのだが、そこで妥協をしない人だけが放浪する人生を選択できるのであらう。『モノより思い出』などというキャッチコピーの車のCMが昔あったが、車というモノを売るCMにおよそ似つかわしくない(てか、あざとさが耳について嫌いだった)そんな言葉は著者の人生にこそ相応しいのであらう。

 「南へ」のほうは、その後の著者の日常を綴ったいつもながらの“水面上1メートル”からのエッセイ。著者はとりあえず鹿児島に居を構え、河川行政の有り様に憤りつつも残り少なくなっていく日本の自然を楽しむのである。『この国では「自然保護運動」は自動的に「反政府運動」になる』と著者は言うが、まぁ当たっていなくもないとは思う。「川が大事」という視点で見れば日本の河川行政にはガマンならないであらうが、我が国では川を土木技術で制御することが必要な場合もまた多々あるのであって、それまでも否定してしまったらそれはやはり「反政府運動」に他ならないのではないか。それに、著者だって汽車にも車にも乗るわけで、鉄道を敷いたり道路を整備することも自然破壊に繋がるのだから、もうそうなると人間の活動そのものを制限しなくてはならなくなってしまう。まぁ何事も「ほどほど」がいいのだらう。

 ちなみに、本書の中で度々取り上げられている川辺川ダム建設事業については、先ごろ地元の熊本県知事が反対の意思を表明したこともあり、このまま中止になると思われる。これは著者も加わっている反対運動の成果であらう。

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