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2008.11.10

読書録:「中国の鳥人」椎名 誠

中国の鳥人
椎名 誠
新潮文庫
1997年1月1日発行

2008年11月10日読了

 椎名誠のSF短編集。SFといってもスペースオペラみたいないわゆる「ハードSF」方面ではなく、日常に紛れ込む非日常がだんだんエスカレートして・・・という、筒井康隆や豊田有恒の短編によく見られる「超常小説」とでも言うべき作品である。こういう作品では著者の持つ独特の言語感覚が遺憾なく発揮されるわけで、表題にもなっている「中国の鳥人」に登場する『燦燁煌玉』という宝石や『饅鯰の裏出煮』という料理、また「スキヤキ」に登場する『濡貘』という動物や『ヒジル軟性プラチマチリン』という物質名など、パッと見では訳が分からないが物語中でそれが何であるかが語られてもやっぱり訳が分からない、という摩訶不思議な世界がそこに展開されるのである。

 初めは普通の日常のように見えた世界が、読み進めていくうちに次第に「ん、なんだなんだこれは」という感覚に囚われてきて、そのうち「あ、いかんいかんこのままでは破滅だ」と思いつつも止められずに主人公と共にそのまま転落していく・・・。そんな奇妙で可笑しくてちょっぴり怖い「シーナ的SF空間」が心地よい短編集なのだった。

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