読書録:「現代史の争点」秦 郁彦
現代史の争点
秦 郁彦
文春文庫
2001年8月10日第1刷
2009年5月21日読了
本書に取り上げられた現代史のトピック-南京事件、慰安婦問題、教科書問題、太平洋戦争についての歴史認識、そして歴史問題を調べる際に大切な役所の情報公開-について、著者による各論文が書かれたのはおおむね1997年から1998年にかけてである。しかしこれら諸問題、特に歴史に関するものは今なお論争が続いており、ものによっては10年前より状況が悪化しているものさえある。歴史の事実はひとつだけなのに、なぜこうなってしまうのか。
歴史問題を複雑にするいちばんの要因は、政治的思惑やイデオロギーが絡むことではないか。何に何がどう絡んでいるのかは各人で判断されたいが、著者がいう『歴史をダシにして、手段をえらばず論敵や中間派を叩き、政府を困らせることで快を叫ぶ「愉快犯」や「快楽犯」』は、いまや右左関係無しに存在することだけは確かである。
歴史問題、特に現代史を考える時には、歴史の事実を“公平な視点”からあるがままに受け入れて評価し、その功績や反省点を次代に伝えていくことが大事なのだと思う。しかしよほど注意してかからないと“公平な視点”というものは持ち得ないだらう。こういう問題を論ずる際には自戒したいものである。
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