読書録:「お世継ぎ」八幡 和郎
お世継ぎ
世界の王室・日本の皇室
八幡 和郎
文春文庫
2007年12月10日第1刷
2009年6月16日読了
イギリス始め欧州各国の王室は我が国でもよく知られるところであるが、もちろん中東や東南アジアなどにもそれぞれに特徴のある王室が存在する。本書の前半は、そのような世界各国の王室事情の紹介と、今は亡き王家や皇帝たちの物語である。
後半は我が国の皇室についてである。いまや文字通りの“ラストエンペラー”すなわち「地上最後の皇帝」である我らが天皇陛下。「皇帝」とは「王の中の王」、王の上に立つ者の称号である。欧州の王室が如何に権威あろうとも、本来なら彼らは我らが天皇の前には平伏さねばならない存在なのである。また、日本の天皇家は「皇室」であって「王室」ではない。よってテレビなどが「ロイヤルファミリー」と称するのは間違いどころか失礼ですらあるのだ。
遅く見ても4世紀から千六百年以上もの永きに渡って、連続性が保たれてきた日本の皇室。その長さと連続性故に世界から一目置かれている我が国の皇室の、その血脈が断ち切られるかもしれない重大な出来事が起きたのは4年前。まだ記憶に新しい、小泉内閣の時の「皇室典範に関する有識者会議報告」と、それを下敷きにした皇室典範改正への強引な動きである。幸いこの時は奇蹟のように秋篠宮紀子様のご懐妊が報じられ、その後2005年9月の悠仁親王のご誕生により、この問題はとりあえず沙汰止みとなった。しかし相変わらず皇位継承が危うい状態であることには変わりはなく、著者はこの状態を打開すべくいくつかの提案を行っている。
千六百年の伝統を、我々の世代でロクに議論もせずに断ち切ることが、本当に許されていいものなのか。「女系」と「女帝」の区別もつかない人たちには(そしてマスコミ関係者にも)、ぜひ一読していただきたい本である。そして「女系」を認めることが如何に大変な結果を招きかねないことなのか、よく考えていただきたいものである。
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