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2009.09.16

読書録:「海軍軍令部」豊田 穣

Kaigungunreibu2海軍軍令部
講談社文庫
\738
1993年12月15日第1刷発行

2009年9月16日読了

 『緊張の夏、日本の夏・戦記物フェア2009』参加作品第2弾(笑)。本書は帝國海軍少尉だった著者が帝國海軍誕生から消滅までを、海軍軍令部という中枢部にスポットを当てて描いた作品である。著者自身があとがきで書いているが、極めて機密性の高かった部署であったがために資料が少なく、また海軍の上層部であるためもともと所属していた人物の年齢が高く、聞き取り取材をしようにも物故されている人が多くて満足な取材もできない中で、作品をまとめるのに苦労したようである。そのせいかどうしても「表面をなぞっているだけ」な感じが否めず、半分の分量を占める太平洋戦争の話でさえも戦史を追っているだけの部分が多いように思えてしまうのであった。もっとも、軍令部の動きだけを追っていたら政治的な話に終始してしまい、物語として極めてつまらないモノになったかもしれないから、これはこれでいいのだらう。

 「失敗は成功の元」というが、それは逆もまた真なりなのである。艦隊同士の砲撃戦であった日本海海戦があまりに完璧な勝利であったがために、夢よもう一度とばかりに大艦巨砲主義に凝り固まり、航空機による攻撃の前には如何なる水上艦艇も太刀打ちできないことを自らの海軍が立証したにも関わらず、時代の移り変わりについていけなかった軍令部内部の意識が、敗戦を防げなかった大きな要因であったことは間違いないところであらう。また、日本海海戦時における山本権兵衛のような、全体を見渡せる大局観を持った人物が、政治家や軍上層部にいなかったことも不運であった。

 必要な時に必要とされる資質を持った人物が必要なところにいるか否かで、国家の命運は大きく変わるのだということを、いままさに我々は体験しているところだけに、数年先の我が国の運命を想像するに決して明るい気分にはなれないのであった。(~。~;)

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