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2010.02.01

読書録:「クルスク大戦車戦」ディヴィット・L.ロビンズ

クルスク大戦車戦(上)(下)
ディヴィット・L.ロビンズ
訳・村上 和久
カバーイラスト・佐竹政夫
新潮文庫
\743(上・下とも)
2006年1月1日発行(上・下とも)

2010年1月31日読了

 クルスク大戦車戦といえば第二次大戦中、というより史上最大の戦車戦として名高い戦闘である。しかし飛行機マニアであり、欧州戦史より太平洋戦史のほうに興味を持っているワタシとしては「よくわからない」戦闘なのである(爆)。しかしそんなワタシでも1943年7月のクルスクの向日葵畑における戦車対戦車の肉弾戦(という表現は妙な気もするが)を体験できたような気がするのだから、これは著者の表現力の賜(加えて訳者の技量)なのであらう。

 ドイツ側主人公の『アドルフ・ヒトラー』師団のティーガー戦車に乗って指揮を執るスペイン人大尉(これがまた紆余曲折あってこの地位にあったりする)の栄光と挫折、ドイツ軍作戦司令部にいて実はソ連側スパイの情報将校の動き、ソ連側主人公で同じT-34戦車に乗って戦うコサック人親子の葛藤、「魔女飛行隊」で飛ぶその娘の戦いなどを織り交ぜつつ、物語はクライマックスのプロホロフカ戦車戦へと突き進んでいくわけだが、これだけ多様の人物と情景が入り交じっても物語がごちゃごちゃにならず、主題である戦車のことをロクに知らないワタシでも楽しんで読むことができた。ドイツ側、ソ連側それぞれがほぼ等量に描かれているため(ソ連側のほうがちょっと多いかな?)、どちらかに感情移入して読むことは難しいが、そのためにむしろ全体を俯瞰して見られるようにも思えるので、この戦いそのものの推移などをよく知らない読者にはかえって好都合かもしれない。

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