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2010.03.27

読書録:「ファイナル・アプローチ」ジョン・J.ナンス

ファイナル・アプローチ(上)ファイナル・アプローチ(下)ファイナル・アプローチ(上)(下)
ジョン・J.ナンス
訳・池 央耿
ハヤカワ文庫NV
\583(上)・\602(下)
1995年6月30日発行(上・下とも)
【カバーイラスト:高荷義之】

2010年3月27日読了

 航空機事故を扱ったサスペンス小説、という括りをすればその通りなのであるが、この作品は事故に遭う旅客機のコクピット内や客室内でのやりとりは導入部に過ぎない。何しろ事故は上巻の42ページで発生してしまうのだ。つまりカバーイラストはクライマックスではないわけで、高荷氏の迫力あるイラストに惹かれて買うと肩透かしを食うというわけだ(笑)。

 この作品は、事故の後のNTSB(National Transportation Safety Board -国家運輸安全委員会)による事故調査の推移や、事故の当事者である航空会社が自社の責任を少しでも軽減しようと、NTSB委員長やFAA(Federal Aviation Administration -連邦航空局)副長官との間で交わす後ろ暗いやり取り、NTSB委員長の政治的野心によりコトを荒立てないよう圧力を掛けられる現場の事故調査官(=主人公)の葛藤、さらに事故調査の過程で開催される聴聞会、そしてNTSB改革法案を審議する上院小委員会の公聴会での迫真の駆け引きなど、政治小説や法廷小説的な要素のほうがむしろメインといっていいだらう。その内容の面白さと濃さは、カバーイラストを信用(笑)したことで喰らった肩透かし感を補って余りあるモノであった。

 こういう翻訳小説の場合、文庫本に付き物の「解説」の代わりに「訳者あとがき」が付くことが多いのだが、本書では解説を航空ジャーナリストの中村浩美氏が書いている。それだけでも飛行機オタ的には驚きだが、さすが飛行機の専門家だけに、一般には馴染みの薄い本書に登場する専門的分野を判りやすく紐解いてくれる。こっちを先に読めば良かった(笑)。

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