読書録:「原潜〈アメリカ〉強奪」スティーヴン・クーンツ
原潜〈アメリカ〉強奪(上)(下)
スティーヴン・クーンツ
訳・北澤 和彦
扶桑社ミステリー
\848(上・下とも)
2007年6月30日第1刷発行(上・下とも)
2010年5月15日読了
前作「キューバ」まではまだ飛行機がらみの第一線にいたジェイク・グラフトン少将だったが、本作ではついに陸に上がってイージス衛星開発に関わる国際的な連絡スタッフのまとめ役になっている。この手の冒険小説では、主人公が裏方ではやはりどうにも盛り上がりに欠けるような気がしてならない。しかも物語は、そのイージス衛星が打ち上げに失敗して行方不明になる一方、アメリカ海軍の最新鋭原子力潜水艦「アメリカ」が初の作戦航海に出ようとした矢先、何者かに乗っ取られ盗まれてしまうという、なんとも突飛な出来事から始まるのだ。
だもんで、なんというか「やっぱその設定には無理がないかい?」という思いが最後までつきまとってしまい、前作ほど楽しめなかったというのが正直なところであった。クライマックスシーンなんて、なんだって少将だの大将だのという将官が敵の本拠地に乗り込んであんな大立ち回りを演ずるのか、その必然性がよく判らない。現実世界ではまずあり得ないだろう、というシーンだけに、「主人公だから」という理由だけでは弱すぎるのだ。ここはやはり、大統領になってしまったかつての主人公の手足となって働いていた人物を、次の物語の主人公に据えたトム・クランシーみたいに、長らくグラフトン少将の副官を務めているトード・ターキントン中佐をメインに据えて暴れさせたほうがよかったのではないかなぁ、とどうしても思ってしまうのであった。
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