読書録:「アド・バード」椎名 誠
アド・バード
椎名 誠
集英社文庫
\699
1997年3月15日第1刷
2010年6月4日読了
「巨大な2大企業(?)による広告合戦の末に荒廃した世界」という舞台設定からしてぶっ飛んでいる。その荒廃した世界に住むマサルと菊丸の兄弟が、行方不明の父を捜しに冒険の旅に出る、というのが物語の大筋。著者の持つ独特の言語感覚と「どおだどおだすごいだろこれからもっとすごくなるぞどんどんいくぞ」とばかりに読者をぐいぐいと引っ張っていく筆力で、長い作品であるが一気に読めてしまう。
読んでいて思うのは「広告は誰のためにあるのか」ということだらう。物語の世界は、広告がそれ自体を目的としてしまったような世界なのであるが、なんとまぁ実に虚しいものである。だが現実世界でも、今や広告はどこにだって存在する。それを鬱陶しいと思うことも多々ある。資本主義社会において広告の持つ力の強さは言うまでもない。世の中に大いなる影響力を及ぼすことができるマスコミはスポンサー様に逆らえず、勢いその広告を制作する2大大手広告代理店に権力が集中する構図になっている(あれ、ここでも2大・・・?)。この物語の世界とまではいかなくても、地上に存在するありとあらゆるモノが広告で埋め尽くされる日が来ないことを祈るばかりである。((((;゚Д゚)))
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